税金・社会保険

2026年「年収の壁」大改正
106万円の壁は10月に撤廃
税の非課税枠は178万円

2026年9月9日読了約16分Life Asset FP編集部
2026年は「年収の壁」が大きく動く年です。所得税がかからない年収の上限は178万円へ、配偶者控除の判定ラインは136万円へ引き上げられ、10月には社会保険の「106万円の壁」(月額8.8万円の賃金要件)が撤廃されます。

ただし、改正の施行時期は1月・4月・10月とバラバラです。しかも「106万円の壁の撤廃」は、社会保険に入らなくてよくなるという意味ではありません。ここを取り違えると、働き方の計画が大きく狂います。

この記事では、①税の壁と社会保険の壁はまったく別物であること、②改正の時系列、③106万円の壁の撤廃が実際に何を意味するのか、④手取りはどう変わるのかの試算、という順で、公表情報をもとに整理します。

大前提:「年収の壁」は2種類ある

ニュースでは「年収の壁」とひとまとめに語られますが、実際には性質のまったく異なる2つの壁が混在しています。この区別ができていないと、改正の意味を読み違えます。

種類代表的な壁超えるとどうなるか
税の壁178万円(所得税)
136万円・169万円・207万円(配偶者控除・配偶者特別控除)
超えた分にだけ税がかかる、または配偶者側の控除が段階的に減る。いきなり大きく損はしない
社会保険の壁106万円(賃金要件)
130万円(被扶養者認定)
1円でも超えると保険料負担がまとめて発生する。手取りが段階的でなく一気に減る

税の壁は「超えたところから少しずつ」ですが、社会保険の壁は「超えた瞬間に段差が生まれる」構造です。働き控えの本当の原因は、税ではなく社会保険の壁にあります。

覚えておきたい違い:税の「年収」は給与収入(通勤手当は原則非課税で含まない)で判定します。一方、健康保険の被扶養者の「年収130万円」には通勤手当や賞与も含めて判定するのが一般的です。同じ「年収」という言葉でも中身が違います。

2026年の改正スケジュール(時系列表)

2026年の改正は、税と社会保険がそれぞれ別の法律で動くため、施行時期がそろっていません。まず全体像を時系列で押さえます。

時期変わること影響を受ける人
2026年1月〜
(2026年分の所得)
基礎控除・給与所得控除が引き上げられ、所得税がかからない給与収入の上限が178万円に。配偶者控除の判定ラインは給与収入136万円給与収入が160万〜178万円ほどの人/配偶者控除を使う世帯
2026年4月〜健康保険の被扶養者認定(130万円の壁)が労働契約ベースの判定に変更配偶者の扶養に入って働く人
2026年4月〜子ども・子育て支援金の徴収開始(協会けんぽは0.23%・労使折半)/雇用保険料率が引き下げ(一般の事業で合計1.35%、労働者負担0.5%厚生年金・健康保険や雇用保険に加入して働くすべての人
2026年10月1日短時間労働者の社会保険加入要件のうち賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃=いわゆる「106万円の壁」がなくなる週20時間以上・従業員51人以上の職場で、月8.8万円未満で働いていた人
2026年12月178万円などの新しい控除額が年末調整で反映される(1〜11月の毎月の源泉徴収は従来どおり)年末調整を受ける給与所得者
2027年10月〜
2035年10月
企業規模要件を段階的に撤廃(2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に撤廃)小規模な事業所で働く短時間労働者
見落としやすいポイント:178万円の新しい控除額は「2026年分の所得税」に適用されますが、2026年1月〜11月の毎月の給与から引かれる源泉徴収額は従来どおりです。差額は2026年12月の年末調整でまとめて精算されるため、例年より還付が多くなる人がいます。毎月の手取りが1月からすぐ増えるわけではない点に注意してください。

税の壁:178万円と136万円の中身

178万円はどう計算されているのか

「年収178万円まで所得税がかからない」という数字は、2つの控除の合計です。2026年分(令和8年分)から、次のように引き上げられました。

控除本則2026・2027年分の特例合計
給与所得控除(最低保障額)69万円+5万円74万円
基礎控除(合計所得489万円以下)62万円+42万円104万円
合計=所得税がかからない給与収入の上限178万円

給与所得控除の最低保障額は本則で65万円から69万円へ4万円引き上げられ、さらに2026年・2027年分に限り5万円が上乗せされて74万円になります。基礎控除も本則58万円から62万円へ引き上げられたうえで、合計所得489万円以下の人には42万円が上乗せされ104万円となります。74万円+104万円=178万円が、いわゆる「178万円の壁」の正体です。

なお、基礎控除の上乗せは所得によって段階的に縮小します。合計所得が489万円を超え655万円以下の人への上乗せは5万円(基礎控除67万円)とされています。178万円という数字は、給与収入だけで所得が少ない人に当てはまる目安だと理解してください。

配偶者控除の壁は136万円に

配偶者の収入が一定以下であれば、世帯主側は配偶者控除(最大38万円)を受けられます。この判定に使う「配偶者の合計所得金額」の上限が62万円になったことで、給与収入だけの配偶者なら136万円(=62万円+給与所得控除74万円)が新しい判定ラインになりました。

配偶者の給与収入(2026年分)世帯主が受けられる控除
136万円以下配偶者控除 38万円(満額)
136万円超〜169万円以下配偶者特別控除 38万円(満額のまま)
169万円超〜207万円以下配偶者特別控除が段階的に減少
207万円控除なし

ここで大事なのは、136万円を超えても世帯の税負担がいきなり跳ね上がるわけではないということです。136万円を超えても169万円までは配偶者特別控除が満額(38万円)残るため、世帯主側の控除額は変わりません。「136万円を1円でも超えたら大損」という理解は誤りです。

注意:上表の控除額は、世帯主本人の合計所得金額が900万円以下の場合です。900万円超〜950万円以下ではおよそ3分の2、950万円超〜1,000万円以下ではおよそ3分の1に減り、1,000万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除ともに適用されません。

住民税については、所得税とは別の非課税限度額があり、しかも前年の所得に対して翌年度に課税される仕組みです。所得税がゼロでも住民税だけかかるケースがあり、非課税限度額は自治体によって差があります。具体的な金額はお住まいの市区町村の案内で確認してください。

「106万円の壁の撤廃」が本当に意味すること

ここが本記事でもっとも誤解の多いところです。結論から書きます。

2026年10月に撤廃されるのは「賃金要件」だけ。社会保険に入らなくてよくなる、という意味ではありません。むしろ、これまで賃金の低さを理由に加入を免れていた人が、新たに加入対象になります。

短時間労働者が勤務先の健康保険・厚生年金に加入する要件は、もともと複数あります。2026年10月に撤廃されるのは、そのうちの「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件だけです。他の要件は残ります。

要件2026年9月まで2026年10月以降
週の所定労働時間20時間以上20時間以上(残る)
賃金月額8.8万円以上撤廃
雇用見込み2か月を超える見込み2か月を超える見込み(残る)
学生でないこと学生は対象外学生は対象外(残る)
企業規模従業員51人以上従業員51人以上(2027年10月から段階的に縮小)

つまり「106万円の壁」は「週20時間の壁」に置き換わるというのが正確な理解です。厚生労働省は、この改正により全国でおよそ200万人が新たに厚生年金の加入対象になると見込んでいると報じられています。

賃金要件が撤廃される背景には、最低賃金の大幅な引き上げがあります。最低賃金が上がった結果、週20時間働けば月額8.8万円をほぼ自動的に超えるようになり、賃金要件を独立して維持する実務的な意味が薄れていました。「壁がなくなって働きやすくなった」というより、「実態に合わなくなった要件を整理した」改正と捉えるほうが実態に近いといえます。

ここを取り違えないでください:「106万円の壁が撤廃される」=「年収106万円を超えても保険料を払わなくていい」ではありません。むしろ逆で、年収106万円未満でも週20時間以上働いていれば保険料が発生する方向の改正です。「壁の撤廃」という言葉のイメージだけで判断しないようにしてください。

130万円の壁は残る。ただし判定方法が変わる

従業員50人以下の職場で働く場合や、週20時間未満で働く場合は、勤務先の社会保険には入りません。この場合に効いてくるのが「130万円の壁」です。配偶者の健康保険の被扶養者でいられるかどうかの境目で、この130万円という金額自体は2026年も変わりません。超えれば国民健康保険・国民年金に自分で加入することになります。

2026年4月からの変更点

変わったのは金額ではなく判定のしかたです。2026年4月からは、労働条件通知書などに書かれた時給・所定労働時間・勤務日数といった労働契約の内容から年間収入を算定し、それが130万円未満であれば原則として被扶養者と認定される方式になりました。

項目2026年3月まで2026年4月から
判定の材料実際の収入見込み額労働契約の内容(時給×所定労働時間×日数など)
契約外の残業代見込み収入に含めて判断されがち労働契約で明示されていなければ原則として算定に含めない
必要書類収入見込みの申立てなど労働条件通知書等と、給与収入のみである旨の申立て

この見直しのねらいは「予見可能性を高めること」です。年度の途中で残業が増えるたびに扶養から外れるかどうかを心配する状況を減らし、働き控えを和らげる狙いがあります。想定外の残業で結果的に年収が130万円を超えても、それが社会通念上妥当な範囲であれば扶養の取り扱いは変わらないとされています。

また、人手不足による一時的な収入増については、事業主が「一時的な収入変動である」と証明することで扶養を継続できる仕組みがあり、これは恒久的な取り扱いとして続きます。原則として連続2回までが想定されています。新しい労働契約ベースの判定と、この事業主証明は併存する関係です。

実務上の注意:労働契約ベースの判定になったことで、労働条件通知書の記載内容がそのまま扶養判定に直結します。時給改定やシフト変更があった際は、契約書類が実態と合っているかを確認しておくことが大切です。最終的な認定は加入している健康保険組合等の判断によります。

手取りの逆転は起きるのか:数字で確認する

もっとも気になるのは「保険料を払うことになったら、手取りはいくら減るのか」でしょう。2026年度の保険料率をもとに試算します。

試算の前提(概算)

・健康保険(協会けんぽ)医療分:9.90%(2026年度・全国平均。都道府県により異なります)

・子ども・子育て支援金:0.23%(2026年度)

・厚生年金保険:18.3%(2017年9月以降据え置き)

・いずれも労使折半のため本人負担は合計 14.215%(9.90÷2+0.23÷2+18.3÷2)

・40歳未満(介護保険料の負担なし)を想定。40歳以上は介護保険分(2026年度 1.62%・労使折半で本人 0.81%)が加わります

・雇用保険料と税は加入前後で変わらないため比較から除いています。保険料は月給そのものではなく「標準報酬月額」に料率を掛けて計算します

ケース:週20時間・年収100万円で働いていた人

2026年10月に新たに加入対象となった場合

月収 = 100万円 ÷ 12 = 約83,333円 → 標準報酬月額 88,000円(厚生年金の下限等級と同額)

健康保険+子ども・子育て支援金 = 88,000円 ×(9.90%+0.23%)÷ 2 = 約4,457円/月

厚生年金 = 88,000円 × 18.3% ÷ 2 = 8,052円/月

本人負担の合計 = 約12,509円/月 = 年間約150,100円

手取り = 100万円 − 約15.0万円 = 約85.0万円(所得税は178万円まで非課税のため税負担の増加はありません)

年収100万円のままなら、手取りは年間およそ15万円減る計算になります。では、加入前と同じ手取り100万円に戻すには、いくら稼げばよいのでしょうか。同じ前提で計算すると、次のようになります。

年収標準報酬月額本人の保険料(年間)手取り(概算)
100万円88,000円約150,100円約85.0万円
110万円88,000円約150,100円約95.0万円
117万円98,000円約167,200円約100.3万円(手取りが元に戻る目安)
120万円98,000円約167,200円約103.3万円
130万円110,000円約187,600円約111.2万円

つまり、年収100万円から117万円ほどまで増やせば、保険料を払っても手取りは元の水準に戻ります。逆にいえば、年収100万〜117万円のゾーンは「働く時間を増やしても手取りが加入前を下回る」逆転ゾーンになります。この差はおよそ17万円。月にならすと約1.4万円分の増収で解消できる幅です。

減るのは手取りだけではありません:厚生年金に加入すると、将来の老齢厚生年金が増えます。標準報酬月額88,000円で10年間加入した場合の報酬比例部分は、88,000円 × 5.481 ÷ 1000 × 120か月 = 年約57,900円(月約4,800円)の上乗せとなります。20年なら月約9,600円です。加えて、傷病手当金や出産手当金といった健康保険の給付、障害・遺族厚生年金の対象にもなります。

もっとも、老齢厚生年金の上乗せは受け取りが数十年先であり、いま毎月の手取りが減ることは事実です。「年金が増えるから得」と単純に片づけず、家計として当面の資金繰りが回るかどうかを確認したうえで判断する必要があります。

世帯単位で手取りと収支を確認する

夫婦それぞれの収入・社会保険料を入れて、世帯全体の家計収支を試算できます。

夫婦の家計を試算する →

これからの働き方をどう考えるか

2026年10月以降、扶養内で働く人の選択肢は実質的に整理されていきます。判断の軸になるのは「年収」ではなく「週の所定労働時間」と「勤務先の従業員数」です。

働き方2026年10月以降の扱い意識すべき壁
週20時間未満勤務先の社会保険への加入義務なし130万円の壁(配偶者の被扶養者でいられるか)
週20時間以上・従業員51人以上賃金額にかかわらず加入対象社会保険の壁は事実上なくなる。税の壁(136万・169万・178万・207万円)を見る
週20時間以上・従業員50人以下当面は加入義務なし(2027年10月以降、企業規模要件が段階的に縮小)130万円の壁+将来の適用拡大の時期

注意しておきたいのは、賃金の壁がなくなっても「労働時間の壁」は残るという点です。週20時間という基準が残る以上、加入を避けたい人は労働時間を19時間台に抑える動きに向かいます。壁の場所が「年収106万円」から「週20時間」へ移動しただけ、という側面は否定できません。

その結果として想定されるのは、「週20時間未満に抑えて扶養にとどまる」か、「しっかり働いて厚生年金に加入する」かの二極化です。逆転ゾーンの幅がおよそ17万円と限定的である以上、中途半端に時間を増やすのがもっとも損になりやすい構造でもあります。

よくある質問

Q. 106万円の壁が撤廃されたら、年収106万円を超えても保険料はかからなくなりますか?

A. いいえ、逆です。撤廃されるのは「月額8.8万円以上の賃金がある人だけを加入対象とする」という賃金要件です。2026年10月以降は、週の所定労働時間が20時間以上で、2か月を超える雇用見込みがあり、学生でなく、従業員51人以上の職場に勤めていれば、賃金の額にかかわらず加入対象になります。年収106万円未満でも保険料が発生する方向の改正です。

Q. 週20時間未満で働けば、2026年10月以降も社会保険に入らずに済みますか?

A. 週の所定労働時間が20時間未満であれば、勤務先の健康保険・厚生年金への加入義務は生じません。ただしその場合でも、年収130万円以上になると配偶者の健康保険の被扶養者から外れ、国民健康保険・国民年金に自分で加入することになります。130万円の壁は残っている点に注意してください。

Q. 従業員50人以下の会社で働いています。2026年10月に何か変わりますか?

A. 2026年10月時点では企業規模要件(従業員51人以上)が残るため、原則として変わりません。企業規模要件は2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と段階的に引き下げられ、2035年10月に撤廃される予定です。なお、労使の合意により任意で適用対象とすることもでき、その場合は保険料負担を調整する制度の対象になります。

Q. 178万円まで税がかからないなら、2026年1月から手取りが増えますか?

A. 新しい控除額は2026年分の所得税に適用されますが、2026年1月〜11月の毎月の源泉徴収は従来どおりです。改正後の控除額が反映されるのは2026年12月の年末調整で、1〜11月に多く源泉徴収されていた分は年末調整でまとめて精算されます。毎月の手取りが年初から増えるわけではありません。

Q. 配偶者の年収が136万円を超えたら、世帯の税負担は大きく増えますか?

A. 136万円を超えても、給与収入169万円までは配偶者特別控除が満額(38万円)で残るため、世帯主側の控除額は変わりません。169万円を超えると段階的に減り、207万円を超えるとゼロになります。「136万円を1円でも超えたら急に損をする」という構造ではありません(世帯主本人の合計所得が900万円以下の場合)。

Q. 保険料を払うことになったら、結局は損なのでしょうか?

A. 短期的な手取りは減りますが、それと引き換えに将来の老齢厚生年金が増え、傷病手当金・出産手当金や障害・遺族厚生年金の対象にもなります。本記事の試算では、年収100万円の人が新たに加入した場合、年収を117万円ほどまで増やせば手取りは元の水準に戻る計算でした。損得は年収水準・年齢・家庭の事情によって変わるため、世帯全体の収支で確認することをおすすめします。

2026年の「年収の壁」改正は、税と社会保険がそれぞれ別のスケジュールで動く複雑な内容です。税の壁は緩やかに、社会保険の壁は段差として効くという性質の違いを押さえたうえで、勤務先の従業員数と週の労働時間という2つの条件から、自分がどのケースに当たるのかを確認するところから始めてください。

FP
Life Asset FP編集部

税制・家計管理・資産運用など、暮らしに直結するお金の知識を発信しています。特定の金融商品の販売・仲介は行っておりません。

⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断・社会保険手続きを代替するものではありません。数値・制度内容は2026年9月9日時点で確認できた公表情報に基づきます。健康保険料率は都道府県・健康保険組合により異なり、被扶養者認定の最終判断は加入先の保険者が行います。試算例は記載した前提に基づく概算であり、実際の保険料額・手取り額を保証するものではありません。具体的な取り扱いは勤務先・年金事務所・健康保険組合・税務署・お住まいの市区町村へご確認ください。当サイトは金融商品取引業(投資助言業)・税理士業の登録を受けておりません。

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