額面と手取りの違いとは?

求人票や雇用契約書に書かれている「月給25万円」「年収400万円」という金額は額面(がくめん)と呼ばれます。会社が支払う給与の総支給額のことで、ここから税金や社会保険料が天引きされた後、実際に銀行口座に振り込まれる金額が手取りです。

一般的に、手取りは額面の75〜85%程度になります。つまり「年収400万円」なら実際に使えるお金は310〜320万円前後。この差を理解していないと、住宅ローンの借入額や毎月の貯蓄計画を「額面ベース」で立ててしまい、家計が想定よりずっと苦しくなる、という失敗につながります。

手取り率の目安
(年収400万円)
約78%
単身・40歳未満の概算
手取り率の目安
(年収600万円)
約77%
年収が上がると低下傾向
天引きされる
項目の数
5つ
税金2つ+社会保険3つ
ポイント:日本の所得税は「累進課税」のため、年収が上がるほど税率が上がり、手取り率は少しずつ下がっていきます。「年収が100万円上がったのに、手取りは70万円ちょっとしか増えていない」と感じるのはこのためです。

給料から引かれる5つの項目を理解する

給与明細の「控除」欄を見ると、主に次の5つが天引きされています。それぞれの役割と負担率の目安(2026年6月時点・会社員の場合)を整理しましょう。

項目 負担率の目安(本人負担分) 内容
健康保険料 約5%(労使折半後) 医療費の自己負担を3割にする公的医療保険。40歳以上は介護保険料(約0.8〜0.9%)が上乗せ
厚生年金保険料 9.15%(労使折半後) 老後の年金の柱。控除額の中で最も大きい項目
雇用保険料 約0.5%前後 失業手当・育児休業給付などの財源。料率は年度ごとに見直し
所得税 課税所得の5〜45%(累進) 国に納める税金。毎月概算で天引きされ、年末調整で精算
住民税 約10%(前年所得ベース) 都道府県・市区町村に納める税金。前年の所得に対して翌年6月から天引き

社会保険料は「税金より重い」

意外に思われるかもしれませんが、年収400〜600万円クラスの会社員にとって、負担が最も大きいのは所得税ではなく社会保険料です。健康保険・厚生年金・雇用保険を合計すると額面の約14〜15%が天引きされます。一方、所得税は各種控除を差し引いた後の「課税所得」に課税されるため、年収500万円でも実効負担は額面の3%前後にとどまります。

住民税の時間差に注意:住民税は「前年の所得」に対して課税されます。新社会人の1年目は住民税がほぼゼロのため手取りが多く感じられ、2年目の6月から天引きが始まって「手取りが減った」と驚くのが定番です。転職や退職で収入が下がった年も、前年ベースの住民税の請求は変わらないため注意が必要です。

年収400万・500万・600万円の手取り早見表

それでは本題の早見表です。以下は40歳未満・単身(扶養なし)・社会保険完備の会社員を想定した概算です(2026年6月時点の制度に基づく目安。健康保険料率は加入する健保や都道府県で異なり、実際の金額は数万円単位で前後します)。

額面年収 社会保険料(年) 所得税(年) 住民税(年) 手取り年収 手取り月額換算
400万円 約58万円 約8万円 約17万円 約317万円 約26.4万円
500万円 約72万円 約13万円 約24万円 約391万円 約32.6万円
600万円 約87万円 約20万円 約30万円 約463万円 約38.6万円

年収400万円と600万円では額面の差は200万円ですが、手取りの差は約146万円に縮まります。額面の増加分のおよそ4分の1強が税・社会保険料として差し引かれるイメージです。

年収300万〜800万円のざっくり早見表

額面年収 手取り年収の目安 手取り率
300万円約240万円約80%
400万円約317万円約79%
500万円約391万円約78%
600万円約463万円約77%
700万円約530万円約76%
800万円約595万円約74%
注意:上記はあくまで単身・扶養なしの概算です。配偶者控除・扶養控除・iDeCo・生命保険料控除などがあれば手取りは増えます。正確な金額はご自身の源泉徴収票、または国税庁・お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。
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月収・ボーナスではいくら引かれる?

月収25万円(額面)の給与明細イメージ

項目 金額の目安
総支給額(額面)250,000円
健康保険料▲ 約12,500円
厚生年金保険料▲ 約23,800円
雇用保険料▲ 約1,400円
所得税(源泉徴収)▲ 約5,000円
住民税▲ 約10,000円
差引支給額(手取り)約197,000円

ボーナスからも社会保険料と所得税が引かれる

かつてボーナスは社会保険料の対象外でしたが、現在は賞与からも健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税が天引きされます(住民税は引かれません)。額面50万円のボーナスなら、手取りはおおむね40万円前後になると考えておくとよいでしょう。

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家計相談で最初にお願いしているのが「手取りベースで予算を組む」ことです。ボーナスを額面のまま住宅ローンのボーナス払いに充てる計画を立てていた方が、実際の手取りとの差額で毎回貯蓄を取り崩していた、というケースは珍しくありません。計画は必ず「振り込まれる金額」で立てましょう。

家族構成で手取りはこう変わる

同じ年収500万円でも、家族構成によって税金が変わり、手取りに差が出ます。

家族構成(年収500万円) 主に使える控除 手取りへの影響(目安)
単身 基礎控除のみ 基準(約391万円)
配偶者(収入なし〜パート) 配偶者控除・配偶者特別控除 +年5〜7万円程度
16歳以上の子ども1人 扶養控除(38万円) +年5〜7万円程度
大学生(19〜22歳)の子ども1人 特定扶養控除(63万円) +年9〜11万円程度

なお、16歳未満の子どもには扶養控除がありませんが、代わりに児童手当が支給されます。児童手当は2024年10月から所得制限が撤廃され、高校生年代まで拡充されています(詳しくは子育て支援制度の最新まとめをご覧ください)。

手取りを増やす5つの方法

額面を変えずに手取りを増やすには、「課税所得を減らす=控除を最大限使う」のが王道です。代表的な5つを紹介します。

1

iDeCo(個人型確定拠出年金)

掛金の全額が所得控除の対象。会社員(企業年金なし)なら月2.3万円まで拠出でき、年収500万円なら年間約5.5万円の税負担軽減が目安。ただし原則60歳まで引き出せない点に注意。

2

ふるさと納税

実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる制度。年収500万円・単身なら控除上限は年6万円前後が目安。上限額は家族構成で変わるため、シミュレーターで必ず確認を。

3

生命保険料控除・地震保険料控除

支払った保険料に応じて所得控除が受けられます。年末調整で控除証明書を提出するだけ。出し忘れている方が意外と多い項目です。

4

医療費控除・セルフメディケーション税制

年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、確定申告で控除可能。家族全員分を合算できます。

5

NISAで「増やしたお金」を非課税に

NISAは手取りそのものを増やす制度ではありませんが、運用益(通常約20%課税)が非課税になるため、手取りから生み出すお金の効率を高められます。投資には元本割れのリスクがある点には留意してください。

効果の目安:iDeCo満額+ふるさと納税+保険料控除をきちんと使うと、年収500万円の会社員でも年間7〜10万円程度税負担が軽くなるケースがあります。10年続ければ約100万円。「知っているかどうか」だけで差がつく部分です。

手取りベースで考える家計管理の黄金比率

手取りがわかったら、次は配分です。一般的に目安とされる比率を紹介します(単身・賃貸の場合の一例)。

費目 手取りに対する目安 手取り26万円の場合
住居費25〜30%6.5〜7.8万円
食費15%前後約4万円
水道光熱費・通信費8〜10%2〜2.6万円
保険・医療3〜5%0.8〜1.3万円
趣味・交際費10〜15%2.6〜3.9万円
貯蓄・投資15〜20%3.9〜5.2万円

重要なのは、貯蓄・投資分を「先取り」することです。給料日に自動で別口座やNISA口座に移す仕組みを作れば、残ったお金で生活する形になり、無理なく貯まる家計に変わります。

まとめ:まずは自分の「本当の手取り」を知ることから

✅ この記事のポイント

  • 手取りは額面の75〜85%程度。年収400万円なら手取り約317万円、500万円なら約391万円、600万円なら約463万円が目安
  • 天引きの内訳は社会保険料(約14〜15%)+所得税+住民税。実は社会保険料の方が税金より重い
  • 住民税は前年所得ベース。転職・退職した年の翌年の請求に注意
  • iDeCo・ふるさと納税・各種控除の活用で、年収を変えずに手取りを増やせる
  • 家計の予算とローン計画は必ず「手取りベース」で立てる

本記事の金額はモデルケースの概算です。社会保険料率や税制は毎年見直されるため、最新の数値は国税庁・日本年金機構・ご加入の健康保険組合の公式サイトで必ずご確認ください(2026年6月時点の情報に基づいています)。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・取引を勧誘するものではありません。個々の状況に応じた判断はFP・税理士等の専門家にご相談ください。記事内の制度・数値は2026年6月時点のものであり、最新の情報は各公式サイトをご確認ください。