額面と手取りの違いとは?
求人票や雇用契約書に書かれている「月給25万円」「年収400万円」という金額は額面(がくめん)と呼ばれます。会社が支払う給与の総支給額のことで、ここから税金や社会保険料が天引きされた後、実際に銀行口座に振り込まれる金額が手取りです。
一般的に、手取りは額面の75〜85%程度になります。つまり「年収400万円」なら実際に使えるお金は310〜320万円前後。この差を理解していないと、住宅ローンの借入額や毎月の貯蓄計画を「額面ベース」で立ててしまい、家計が想定よりずっと苦しくなる、という失敗につながります。
(年収400万円)
(年収600万円)
項目の数
給料から引かれる5つの項目を理解する
給与明細の「控除」欄を見ると、主に次の5つが天引きされています。それぞれの役割と負担率の目安(2026年6月時点・会社員の場合)を整理しましょう。
| 項目 | 負担率の目安(本人負担分) | 内容 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 約5%(労使折半後) | 医療費の自己負担を3割にする公的医療保険。40歳以上は介護保険料(約0.8〜0.9%)が上乗せ |
| 厚生年金保険料 | 9.15%(労使折半後) | 老後の年金の柱。控除額の中で最も大きい項目 |
| 雇用保険料 | 約0.5%前後 | 失業手当・育児休業給付などの財源。料率は年度ごとに見直し |
| 所得税 | 課税所得の5〜45%(累進) | 国に納める税金。毎月概算で天引きされ、年末調整で精算 |
| 住民税 | 約10%(前年所得ベース) | 都道府県・市区町村に納める税金。前年の所得に対して翌年6月から天引き |
社会保険料は「税金より重い」
意外に思われるかもしれませんが、年収400〜600万円クラスの会社員にとって、負担が最も大きいのは所得税ではなく社会保険料です。健康保険・厚生年金・雇用保険を合計すると額面の約14〜15%が天引きされます。一方、所得税は各種控除を差し引いた後の「課税所得」に課税されるため、年収500万円でも実効負担は額面の3%前後にとどまります。
年収400万・500万・600万円の手取り早見表
それでは本題の早見表です。以下は40歳未満・単身(扶養なし)・社会保険完備の会社員を想定した概算です(2026年6月時点の制度に基づく目安。健康保険料率は加入する健保や都道府県で異なり、実際の金額は数万円単位で前後します)。
| 額面年収 | 社会保険料(年) | 所得税(年) | 住民税(年) | 手取り年収 | 手取り月額換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約58万円 | 約8万円 | 約17万円 | 約317万円 | 約26.4万円 |
| 500万円 | 約72万円 | 約13万円 | 約24万円 | 約391万円 | 約32.6万円 |
| 600万円 | 約87万円 | 約20万円 | 約30万円 | 約463万円 | 約38.6万円 |
年収400万円と600万円では額面の差は200万円ですが、手取りの差は約146万円に縮まります。額面の増加分のおよそ4分の1強が税・社会保険料として差し引かれるイメージです。
年収300万〜800万円のざっくり早見表
| 額面年収 | 手取り年収の目安 | 手取り率 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約240万円 | 約80% |
| 400万円 | 約317万円 | 約79% |
| 500万円 | 約391万円 | 約78% |
| 600万円 | 約463万円 | 約77% |
| 700万円 | 約530万円 | 約76% |
| 800万円 | 約595万円 | 約74% |
月収・ボーナスではいくら引かれる?
月収25万円(額面)の給与明細イメージ
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 総支給額(額面) | 250,000円 |
| 健康保険料 | ▲ 約12,500円 |
| 厚生年金保険料 | ▲ 約23,800円 |
| 雇用保険料 | ▲ 約1,400円 |
| 所得税(源泉徴収) | ▲ 約5,000円 |
| 住民税 | ▲ 約10,000円 |
| 差引支給額(手取り) | 約197,000円 |
ボーナスからも社会保険料と所得税が引かれる
かつてボーナスは社会保険料の対象外でしたが、現在は賞与からも健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税が天引きされます(住民税は引かれません)。額面50万円のボーナスなら、手取りはおおむね40万円前後になると考えておくとよいでしょう。
家族構成で手取りはこう変わる
同じ年収500万円でも、家族構成によって税金が変わり、手取りに差が出ます。
| 家族構成(年収500万円) | 主に使える控除 | 手取りへの影響(目安) |
|---|---|---|
| 単身 | 基礎控除のみ | 基準(約391万円) |
| 配偶者(収入なし〜パート) | 配偶者控除・配偶者特別控除 | +年5〜7万円程度 |
| 16歳以上の子ども1人 | 扶養控除(38万円) | +年5〜7万円程度 |
| 大学生(19〜22歳)の子ども1人 | 特定扶養控除(63万円) | +年9〜11万円程度 |
なお、16歳未満の子どもには扶養控除がありませんが、代わりに児童手当が支給されます。児童手当は2024年10月から所得制限が撤廃され、高校生年代まで拡充されています(詳しくは子育て支援制度の最新まとめをご覧ください)。
手取りを増やす5つの方法
額面を変えずに手取りを増やすには、「課税所得を減らす=控除を最大限使う」のが王道です。代表的な5つを紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛金の全額が所得控除の対象。会社員(企業年金なし)なら月2.3万円まで拠出でき、年収500万円なら年間約5.5万円の税負担軽減が目安。ただし原則60歳まで引き出せない点に注意。
ふるさと納税
実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる制度。年収500万円・単身なら控除上限は年6万円前後が目安。上限額は家族構成で変わるため、シミュレーターで必ず確認を。
生命保険料控除・地震保険料控除
支払った保険料に応じて所得控除が受けられます。年末調整で控除証明書を提出するだけ。出し忘れている方が意外と多い項目です。
医療費控除・セルフメディケーション税制
年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、確定申告で控除可能。家族全員分を合算できます。
NISAで「増やしたお金」を非課税に
NISAは手取りそのものを増やす制度ではありませんが、運用益(通常約20%課税)が非課税になるため、手取りから生み出すお金の効率を高められます。投資には元本割れのリスクがある点には留意してください。
手取りベースで考える家計管理の黄金比率
手取りがわかったら、次は配分です。一般的に目安とされる比率を紹介します(単身・賃貸の場合の一例)。
| 費目 | 手取りに対する目安 | 手取り26万円の場合 |
|---|---|---|
| 住居費 | 25〜30% | 6.5〜7.8万円 |
| 食費 | 15%前後 | 約4万円 |
| 水道光熱費・通信費 | 8〜10% | 2〜2.6万円 |
| 保険・医療 | 3〜5% | 0.8〜1.3万円 |
| 趣味・交際費 | 10〜15% | 2.6〜3.9万円 |
| 貯蓄・投資 | 15〜20% | 3.9〜5.2万円 |
重要なのは、貯蓄・投資分を「先取り」することです。給料日に自動で別口座やNISA口座に移す仕組みを作れば、残ったお金で生活する形になり、無理なく貯まる家計に変わります。
まとめ:まずは自分の「本当の手取り」を知ることから
✅ この記事のポイント
- 手取りは額面の75〜85%程度。年収400万円なら手取り約317万円、500万円なら約391万円、600万円なら約463万円が目安
- 天引きの内訳は社会保険料(約14〜15%)+所得税+住民税。実は社会保険料の方が税金より重い
- 住民税は前年所得ベース。転職・退職した年の翌年の請求に注意
- iDeCo・ふるさと納税・各種控除の活用で、年収を変えずに手取りを増やせる
- 家計の予算とローン計画は必ず「手取りベース」で立てる
本記事の金額はモデルケースの概算です。社会保険料率や税制は毎年見直されるため、最新の数値は国税庁・日本年金機構・ご加入の健康保険組合の公式サイトで必ずご確認ください(2026年6月時点の情報に基づいています)。
家計相談で最初にお願いしているのが「手取りベースで予算を組む」ことです。ボーナスを額面のまま住宅ローンのボーナス払いに充てる計画を立てていた方が、実際の手取りとの差額で毎回貯蓄を取り崩していた、というケースは珍しくありません。計画は必ず「振り込まれる金額」で立てましょう。