この動きの背景にあるのが金利の上昇です。10年国債利回りは1月の月平均2.095%から10月には3.101%へと、1年足らずで約1.0ポイント上がりました。日銀は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げています。
「利回り5%超なら買いでは」という見方を目にすることもあります。この記事では結論を出す代わりに、自分で判断するための材料——金利とリートをつなぐ仕組み、利回りの読み方、見落としやすいリスク——を公表データをもとにFPが整理します。
いま何が起きているのか(数字で確認)
まず事実を日付つきで押さえます。相場の記事は数字が古くなりやすいので、いつ時点の値なのかを必ず確認する習慣が役に立ちます。
| 項目 | 水準 | 時点 |
|---|---|---|
| 東証REIT指数 年初来高値 | 2,067.93 | 2026年1月16日 |
| 東証REIT指数 年初来安値 | 1,649.05 | 2026年10月8日 |
| 東証REIT指数 直近終値 | 1,654.42 | 2026年10月14日 |
| 分配金利回り(平均) | 5.56% | 2026年10月13日 |
| 10年国債利回り(長期金利) | 3.005% | 2026年10月13日 |
| イールドスプレッド | 2.56% | 2026年10月13日 |
高値からの下落率は (1,654.42 − 2,067.93) ÷ 2,067.93 ≒ −20.0% です。株式指数が最高値圏にあるなかで、リートだけが逆方向に動いている点が今年の特徴といえます。
そもそもJリートとは何か
Jリート(J-REIT)は、投資家から集めた資金でオフィスビル・商業施設・物流施設・住宅・ホテルなどの不動産を購入し、そこから得られる賃料収入を投資家に分配する仕組みの金融商品です。証券取引所に上場しており、株式と同じように売買できます。
分配金の水準が高くなりやすいのには制度上の理由があります。リートは利益の大部分を分配することで法人税が実質的にかからない扱いを受けており、利益を内部に留保せず投資家に回す設計になっているためです。
金利が上がるとなぜリートが下がるのか(3つの経路)
リートと金利の関係は、3つの別々の経路で説明できます。どれか1つではなく、同時に効くところが厄介な点です。
経路1:利回り商品としての相対的な魅力が落ちる
リートは分配金利回りを目当てに買われる商品です。長期金利が上がると、より安全な国債でも一定の利回りが取れるようになり、リートをあえて選ぶ理由が薄れます。資金が国債などへ移れば、リートは売られて価格が下がります。
経路2:イールドスプレッドが縮む
イールドスプレッドとは、リートの分配金利回り − 10年国債利回りのことです。リスクを取る対価としての上乗せ分にあたります。
国債利回りが上がったとき、スプレッドを保つにはリートの利回りも上がる必要があります。しかし分配金は急には増えないため、価格が下がることで利回りが上がるという調整が起きます。これが価格下落の直接的なメカニズムです。
| 時点 | イールドスプレッド |
|---|---|
| 2024年末 | 4%超 |
| 2025年12月24日 | 2.4%程度 |
| 2026年10月13日 | 2.56% |
2024年末から2025年末にかけて大きく縮小し、その後は横ばい圏で推移しています。スプレッドが薄いほど、金利がさらに上がったときの価格下落の余地は大きくなります。
経路3:借入コストの増加と不動産評価の低下
リートは不動産を買うときに借入を使います。取得価格の40〜60%程度を借入で賄うのが一般的とされています。金利が上がると、新規の借入や借り換えのときに支払利息が増え、分配金の原資を圧迫します。
さらに、不動産の価値は将来のキャッシュフローを割り引いて計算されるため、割引率が上がると評価額そのものが下がります。こちらは保有資産の価値に効く経路です。
利回り5.56%をどう読むか
数字の大きさだけを見ると魅力的に映りますが、何と比べるかで意味が変わります。
年間の分配金(税引前)= 1,000,000円 × 5.56% = 55,600円
分配金には通常20.315%の税金がかかるため、手取りの目安は
55,600円 ×(1 − 0.20315)≒ 44,305円
※この利回りは将来も続くことが保証されたものではありません。価格が変われば利回りも変わり、分配金自体が減ることもあります。また投資額そのものが値下がりする可能性があります。
比較の対象として押さえておきたいのが、同じ時期に上がっている他の利回りです。10年国債は3.005%、普通預金も3メガバンクが11月2日から0.5%へ引き上げます。「他では利回りが取れなかった時代」の5%と、今の5%は意味が違います。
「買い時かどうか」を自分で判断する視点
相場の先行きを当てにいくのは専門家でも難しく、当サイトは特定の商品について売買の時期を助言する立場にありません。代わりに、判断の軸を相場ではなく自分側に置く考え方を示します。
- 1そのお金を使う時期はいつか:5年以内に使う予定があるお金で、値動きの大きい資産を持つのは相性が良くありません。リートは価格が1年で20%動く資産だと、今年のデータが示しています。
- 2さらに2割下がっても持ち続けられるか:金利が上昇を続ければ、現在の水準からさらに下がる可能性はあります。下落局面で売らずに済むかを、投資する前に自問しておく価値があります。
- 3すでに持っている資産と重なっていないか:国内株式のインデックスにもリートが含まれる場合があります。また持ち家がある場合、資産全体としてすでに国内不動産へ傾いているとも考えられます。
- 4目的は分配金か値上がりか:分配金を受け取り続けたいのか、価格の回復を狙うのかで、見るべき指標も保有期間も変わります。
- 5一度に買う必要があるか:買う時期を分けると、ひとつの時点の価格に結果が左右されにくくなります。底を当てる必要がなくなる、という性質のものです。
一方で「自分がいつそのお金を使うのか」は、今日の時点で分かります。
資産全体の見通しを数字で確認
積立額・利回り・期間を変えて、将来の資産推移を試算できます。
見落としやすいリスク
利回りの高さに目が向くと、次のような点が後回しになりがちです。
- 1金利上昇が続く可能性:日銀は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げました。今後の利上げペースについては見方が分かれており、追加の上昇があればリートへの逆風は続きます。
- 2分配金は保証されていない:賃料収入が減ったり借入金利が上がったりすれば、分配金は減ります。利回りは「過去の分配実績 ÷ 現在の価格」で計算されたものにすぎません。
- 3増資による希薄化:リートは物件を買い増すために新たな投資口を発行することがあり、1口あたりの価値が薄まる場合があります。
- 4不動産市況そのもののリスク:空室率の上昇、賃料の下落、災害による毀損など、金利とは別の要因も価格に影響します。
- 5元本割れ:リートもリート投資信託も、価格が下がれば投資した金額を下回ります。預金とは性質が異なります。
投資信託で買う場合に確認すること
個別のリート銘柄を選ぶ代わりに、指数に連動する投資信託やETFでまとめて持つ方法もあります。銘柄選びの手間が減り、分散も効きます。当サイトは特定の商品を推奨しませんが、商品を比較するときに見るべき項目は共通しています。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 連動対象の指数 | 東証REIT指数か、別の指数か。中身が違えば値動きも変わります |
| 信託報酬(運用管理費用) | 保有している間ずっとかかるコスト。同じ指数に連動するなら差が出にくい部分です |
| 分配金の扱い | 分配せず再投資するタイプか、定期的に分配するタイプか。目的に合うほうを選びます |
| 純資産総額 | 小さすぎると繰上償還のリスクがあります |
| NISAの対象か | つみたて投資枠・成長投資枠のどちらで買えるかは商品により異なります |
よくある質問
Q. 利回り5%を超えているなら、今が買い時ではないですか?
A. 利回りの高さは「価格が下がった結果」でもあるため、それだけでは判断材料になりません。重要なのは国債との差(イールドスプレッド)がリスクに見合うかどうかで、現在の2.56%をどう評価するかは投資する人の考え方によります。また金利がさらに上がれば価格が下がる余地もあります。当サイトは特定の時期の売買を助言する立場にないため、判断材料の提示にとどめています。
Q. 株が最高値圏なのに、なぜリートだけ下がっているのですか?
A. 株式は企業の業績が伸びれば金利上昇を吸収できる余地がありますが、リートは分配金利回りで比較される商品のため、金利上昇がそのまま相対的な魅力の低下につながりやすい性質があります。加えて借入コストの増加という固有の負担もあります。
Q. 金利が下がればリートは戻りますか?
A. 一般論としては追い風になります。ただし価格は不動産市況・空室率・賃料水準など金利以外の要因にも左右されるため、金利が下がれば必ず戻るとは言えません。今後の金利の方向自体も、現時点で確定したものではありません。
Q. 個別のリート銘柄と投資信託、どちらがよいですか?
A. どちらが優れているというものではありません。個別銘柄は保有物件や財務の中身を選べる一方、分析の手間と1銘柄への集中リスクがあります。投資信託やETFは分散が効き手間が少ない一方、個別の良し悪しを反映させることはできません。かけられる時間と、分散をどこまで求めるかで選び分ける領域です。
Q. 分配金は毎月もらえますか?
A. 個別のJリートは年2回の決算が一般的で、銘柄ごとに決算月が異なります。投資信託の場合は商品の設計によって頻度が変わります。毎月分配型は分配のたびに課税され、元本の一部が払い戻される場合もあるため、仕組みを確認してから選ぶ必要があります。
Q. NISAで買えますか?
A. 商品によります。Jリート(個別銘柄)やリート型の投資信託は成長投資枠の対象となるものがありますが、つみたて投資枠で買える商品は限られています。購入前に、その商品がどの枠に対応しているかをご確認ください。
Jリートの下落は、金利上昇という分かりやすい理由で説明できる動きです。だからこそ、「安くなったから買う」ではなく「なぜ安くなったのかを理解したうえで、自分の資金計画に合うかを考える」という順序が大切になります。数字の意味がつかめていれば、相場のニュースに振り回されずに済みます。