新NISAは2024年の制度開始から3年目に入り、2025年12月末時点で口座数は2,821万口座、累計買付額は71兆円(金融庁発表)まで増えました。積立を続けている人にとっても、これから始めようか迷っている人にとっても、「史上最高値圏」という言葉は気になるところだと思います。
この記事では、相場が今どういう状況にあるのかを確認できた数字だけで整理したうえで、「高値づかみ」が怖い人、含み益の利益確定に悩む人が、それぞれ何を判断軸にすればよいかを、一般的な考え方としてFPの立場から整理します。個別の売買を推奨するものではありません。
今の日経平均はどういう状況か(確認できた数字で整理)
まず、報道で確認できる範囲の数字を時系列で整理します。相場の話は「いつの時点の数字か」があいまいなまま伝わりやすいため、すべて日付とセットで確認したものだけを挙げます。
| 時期 | 日経平均株価 | 備考 |
|---|---|---|
| 2026年1月14日 | 5万4,341円23銭 | 終値で初の5万4,000円台。当時の史上最高値 |
| 2026年6月8日 | 6万4,024円 | 前週末比2,563円安。米雇用統計を受けAI関連株中心に急落 |
| 2026年6月22日 | 7万2,831円73銭 | 取引時間中の史上最高値。史上初の7万円台到達 |
| 2026年7月17日 | 6万4,141円 | 前日比2,694円安の大幅続落 |
| 2026年8月12日 | 6万7,524円06銭 | 1カ月ぶりの高値水準。同日、TOPIXは最高値を更新 |
| 2026年9月8日 | 6万5,269円33銭 | 前日比1,130円51銭安。円高進行が重荷に |
「史上最高値」という言葉だけを切り取ると、今この瞬間も最高値を更新し続けているような印象を持ちやすいですが、実際には史上最高値は6月につけたピークであり、直近はそこから調整している局面にある、というのが2026年9月9日時点で確認できる状況です。
なぜここまで上昇したのか:背景にある要因
2026年に入ってからの上昇には、複数の要因が重なっていると報じられています。
- 1AI・半導体関連への物色:米国のAIデータセンター投資拡大を背景に、AIサーバー向け半導体関連銘柄への買いが相場をけん引したと報じられています。
- 2海外投資家の資金流入:海外投資家による日本株買いが上昇の支えとなったとされています。
- 3円安局面:2026年7月時点でドル円は163円台で推移するなど円安が進み、輸出企業の円換算収益を押し上げる方向に働きました。
- 4企業業績拡大への期待:業績相場が続いているとの見方が繰り返し報じられています。
一方で、6月8日や7月17日のように、米国の金利観測や為替の変動をきっかけに短期間で2,000円超下落する場面も繰り返し発生しています。上昇要因と同じだけの強さで、下落要因も相場に組み込まれている、というのがこの半年ほどの値動きの特徴です。
証券各社の年末予想と、その読み方
2026年6月以降、証券各社から2026年末の日経平均に関する見通しが相次いで公表されています。報道で確認できる範囲では、野村證券が2026年末の見通しを7万円に上方修正(上振れシナリオでは7万円台突破に言及)、大和証券が8万円という見通しを示したとされています。2026年8月時点では、証券各社・銀行の年末予想は7万5,000円前後を中心に、大和証券の8万円やより強気な見方まで幅がある、と報じられています。
予想が当たるかどうかを言い当てようとするより、「予想通りに動かなかった場合にも自分の生活が困らないか」を基準に資産配分を考えるほうが、個人の家計にとっては現実的な向き合い方といえます。
「高値づかみ」が怖い人へ:一括投資と積立投資の違い
「史上最高値圏の今から始めたら、高値づかみになるのでは」という不安はよくあるものです。ここでは特定の期間の実績ではなく、一括投資と積立(ドルコスト平均法)投資でリスクの現れ方がどう違うかを、仮定の数値例を使って構造として確認します。
ある資産の指数が、投資開始時点を100として、半年かけて80まで下落し、その後半年で100まで戻ったと仮定します(あくまで仮の価格推移であり、日経平均の実績ではありません)。
一括投資:開始時点(価格100)で120万円を投資 → 1年後も価格は100に戻っているだけなので、評価額は120万円のまま(損益ゼロ)。
積立投資:毎月10万円ずつ12回、合計120万円を投資 → 価格が下がった局面でより多くの口数を買えるため、平均取得価格は約89.5(100より低い)に下がり、1年後の評価額は約134.1万円(+14.1万円)。
同じ資産が、指数100から1年かけて130まで一本調子で上昇したと仮定します。
一括投資:開始時点(価格100)で120万円を投資 → 1年後の評価額は156万円(+36万円)。上昇局面をすべて享受できます。
積立投資:毎月10万円ずつ12回、合計120万円を投資 → 平均取得価格は約114.2となり、一括より高い価格で買った回が多いため、1年後の評価額は約136.6万円(+16.6万円)にとどまります。
この2つの仮定例からわかるのは、積立投資は「その後に下落局面があった場合の下振れを和らげる」効果がある一方、「調整なく上がり続けた場合には一括投資に劣後する」という、いわばトレードオフの関係にあるということです。どちらが得かは事後的にしか分かりません。積立投資が優れているのは「当たりを引く」ためではなく、将来の値動きが読めない前提のもとで、高値づかみによる大きな痛手を避けやすくするという点にあります。
利益確定に悩む人へ:判断軸は相場ではなく「使う時期」
すでに含み益を抱えている人からは、「史上最高値圏の今のうちに利益確定すべきか」という相談も増えてきます。ここで大切なのは、「これから相場が上がるか下がるか」を言い当てようとしないことです。
証券会社の予想が示す通り、7万5,000円説もあれば9万円という強気な見方もあり、専門家の間でも意見は割れています。相場が最高値をつけたあとにどう動くかを、個人が確度高く言い当てることは現実的ではありません。
- 15年以内に使う予定がある資金か:住宅購入の頭金や教育資金など、使う時期が決まっている資金は、相場水準にかかわらず、必要な時期が近づくにつれて値動きの少ない資産へ段階的に移していく考え方が一般的です。
- 2使う予定のない長期資金か:老後資金など当面使う予定のない資金であれば、目先の相場水準だけを理由に一括で売却する必要性は薄く、当初決めた資産配分を保つという選択肢もあります。
- 3NISAの非課税枠か、課税口座か:NISA口座内の利益には税金がかかりませんが、一度売却して非課税投資枠を使い切ってしまうと、翌年まで新たな非課税枠での再投資ができない点も、売却の是非を考えるうえでの材料になります(制度の詳細は国税庁・金融庁の最新情報でご確認ください)。
- 4資産配分が当初の想定からずれていないか:株式の値上がりによって、全体に占める株式の比率が当初の計画より高くなっている場合は、リスクの取りすぎになっていないかを確認する材料になります。
「利益確定すべきか」という問いに対する一般的な答えはありません。相場を当てにいくのではなく、資金の使い道と時期、非課税制度の仕組み、自分の資産配分から逆算して考えるというのが、判断の軸になります。
積立を続けた場合の将来値を確認
想定利回りや積立額を変えながら、長期的な資産の増え方をシミュレーションできます。
積立を続ける人が今確認しておきたいこと
相場水準がどうであれ、積立投資を続けている(あるいはこれから始める)人が定期的に確認しておきたいポイントは共通しています。
- 1生活防衛資金は確保できているか:相場が調整局面に入ったときに、生活費を投資資金の取り崩しに頼らずに済むよう、生活費の3〜6カ月分程度を目安に現金・預金で確保しておく考え方が一般的です。
- 2自分のリスク許容度に合っているか:史上最高値圏でも下落局面でも、含み損を見て積立をやめてしまわないか、無理のない金額で続けられているかを見直します。
- 3資産配分が偏っていないか:日本株、先進国株、新興国株など、特定の地域・資産クラスに偏りすぎていないかを確認します。
- 4非課税枠を計画的に使えているか:NISAのつみたて投資枠・成長投資枠それぞれの上限や、年間の利用状況を確認します。
- 5「やめどき」ではなく「積立額の見直しどき」で考える:相場が気になって不安なときこそ、積立をやめる・始めるという極端な判断よりも、無理のない範囲に積立額を調整するという選択肢もあります。
誠実に見ておきたいリスク
史上最高値圏という言葉は明るいニュースとして伝わりがちですが、リスクの面も同じくらい正確に押さえておく必要があります。
相場が最高値を更新したことと、その水準が今後も維持される・さらに上昇することとは、別の話です。上振れ・下振れの両方が起こり得るという前提で、自分の資産配分やリスク許容度を確認しておくことが大切です。
よくある質問
Q. 日経平均が史上最高値圏の今、投資を始めるのは遅いですか?
A. 「遅い」かどうかは、その後の値動き次第であり、事前に確度高く判断することはできません。仮定の数値例で見た通り、積立投資は調整局面があった場合の下振れを和らげる効果がある一方、上昇が続いた場合には一括投資に劣後する面もあります。相場水準そのものよりも、無理のない金額で長期的に続けられる仕組みを作れるかどうかが判断材料になります。
Q. 一括投資と積立投資、どちらが得ですか?
A. どちらが得だったかは、投資後の値動きが判明して初めて分かることであり、事前にどちらが得かを言い当てることはできません。一般的には、まとまった資金がある場合でも、時期を分けて投資することで高値づかみのリスクを分散する考え方があります。ご自身の資金状況やリスク許容度に応じて検討する事柄です。
Q. 含み益が出ています。今のうちに利益確定すべきですか?
A. 相場が今後どう動くかを基準にするのではなく、その資金をいつ・何のために使う予定なのかを基準に考える方法があります。近い将来に使う予定がある資金は取り崩しを検討する材料になり得ますが、当面使う予定のない長期資金であれば、当初の資産配分を維持するという選択肢もあります。
Q. 証券会社が「年末7万5,000円」などと予想していますが、信じてよいですか?
A. 各社の予想はあくまで予想であり、その通りになる保証はありません。2026年は年初の5万4,000円台から半年で7万2,000円台まで上昇するなど、専門家の予想を超える展開もあったと報じられています。予想は参考情報の一つとして受け止め、それだけを根拠に売買のタイミングを決めることは避けたほうがよいでしょう。
Q. NISAで積立中ですが、暴落が怖くて積立をやめるべきか迷っています。
A. 積立をやめるかどうかを相場水準だけで判断すると、下がったからやめる・上がったから始めるという後手の対応になりがちです。まずは生活防衛資金が確保できているか、無理のない積立額になっているかを確認し、そのうえで続けるかどうかを検討することをおすすめします。不安が大きい場合は、積立をやめる・続けるの二択ではなく、積立額を見直すという選択肢もあります。
Q. 円安が株高を支えていると聞きました。円高になったらどうなりますか?
A. 円安は輸出企業の円換算収益を押し上げる方向に働くとされ、株高の一因として指摘されています。逆に円高が進むと、輸出関連企業の業績・株価には逆風になり得ます。実際に2026年9月8日には円高進行が日経平均の下落要因の一つになったと報じられています。為替は将来の方向を確度高く予測できるものではないため、円安・円高どちらに動いても大きな影響を受けすぎないよう、資産配分を分散しておくことが一つの考え方です。
日経平均は2026年に入り、5万4,000円台から7万2,000円台まで急速に上昇したのち、9月にかけて調整をはさみながら推移しています。「史上最高値圏」という言葉に一喜一憂するよりも、自分の資金がいつ必要になるのか、どれだけのリスクを取れるのかという自分自身の状況から、投資との向き合い方を考えていくことが大切です。