数日おきに数百円から千円単位で上下する相場が続くと、新NISAで毎月積み立てている人ほど「このまま続けて大丈夫か」と不安になるものです。
この記事では、相場の先行きを予想するのではなく、値動きが大きくなる理由、積立投資の仕組み(ドル・コスト平均法)を仮の数字で確かめた結果、陥りやすい心理的な落とし穴、そして自分の計画で確認しておきたい項目を整理します。売買のタイミングや特定の商品を勧める内容ではありません。
直近の値動きを数字で確認する
まず、報道されている数字を並べます。いずれも日経平均株価の終値です。
| 日付 | 終値 | 前営業日比 | 主な報道内容 |
|---|---|---|---|
| 2026年10月22日 | 62,907円 | −1,713円 | AI・半導体関連株が売られ大幅反落 |
| 2026年10月23日 | 62,693円 | — | (26日の前営業日の終値として報道) |
| 2026年10月26日 | 62,189円 | −503円 | 3日続落。約3カ月ぶりの安値水準 |
| 2026年10月27日 | 63,268円 | +1,078円 | 4営業日ぶりに反発 |
10月26日は、前週末の米国株安の流れを受けて朝方に600円近く下げた後、押し目買いで持ち直す場面もありましたが、最終的には503円安で終わりました。一方、同じ日の東証株価指数(TOPIX)は上昇しており、指数によって動きが違った日でもあります。
27日の大幅高は、米国の大手AI開発企業が新規株式公開(IPO)に向けた目論見書を公表したとの報道を受け、AI・半導体関連株に買いが入ったためと伝えられています。ただし報道によれば、上昇幅1,078円のうち約601円は値がさの1銘柄による押し上げで、東証プライム市場では値下がり銘柄のほうが多い状況でした。
なお、日経平均は2026年6月22日に取引時間中の高値7万2,831円をつけたと報じられています。10月26日の終値はそこから約14.6%低い水準です。
なぜ1日で1,000円も動くのか
値動きの背景として、10月下旬の報道では主に次のような要因が挙げられています。どれか一つで説明できるものではなく、複数の材料が重なって振れ幅が大きくなっていると理解するのが自然です。
要因①:AI関連投資への期待と懸念の綱引き
10月22日の1,713円安は、米国の半導体製造装置メーカーの決算後の株価下落や、米大手IT企業の巨額なAI設備投資に対する財務面の懸念がきっかけと報じられました。反対に27日は、AI関連の大型IPOの報道が買い材料になっています。同じ「AI」というテーマが、数日のうちに売りにも買いにも働いたわけです。
要因②:原油高と中東情勢
米国の原油先物(WTI)は10月23日に1バレル103.27ドルまで上昇しました(12月渡し)。26日の東京市場は、原油高を背景とした前週末の米国株安の流れを引き継いだと報じられています。原油高は企業のコスト増や物価上昇につながるため、株式市場では警戒材料になりやすい要素です。
要因③:米国の長期金利が5%前後
米国の10年国債利回りは9月に5%を超え、10月27日のニューヨーク市場では4.999%と、5%前後で推移しています。金利が高い水準にあると、将来の利益を現在の価値に割り引いて評価する株式、とくに成長期待の大きい銘柄の評価が下がりやすくなるといわれます。
要因④:指数の構成による増幅
前述のとおり、日経平均は値がさ株の影響が大きい指数です。AI・半導体関連の一部銘柄が大きく動くと、指数全体が数百円単位で動きます。指数が6万円台という高い水準にあることも、1日あたりの「円」での変動幅を大きく見せる一因です。
「1,000円」を割合で見直す
ニュースで目に入るのは「円」での変動幅ですが、資産への影響を考えるときは割合(%)で見るほうが実態に合います。
| 日付 | 変動幅 | 変動率 |
|---|---|---|
| 2026年10月26日 | −503円 | 約−0.80% |
| 2026年10月27日 | +1,078円 | 約+1.73% |
| (参考)2024年8月5日 | −4,451円 | 約−12.4%(下げ幅は過去最大) |
| (参考)2024年8月6日 | +3,217円 | 約+10.2%(上げ幅は過去最大) |
指数が6万円台のときの1,000円は約1.6%です。仮に3万円台のときなら同じ1,000円でも約3%になります。「過去最大の値幅」という見出しは、指数の水準が高いほど出やすいという点を覚えておくと、数字に振り回されにくくなります。
2024年8月には、5日に過去最大の4,451円安、翌6日に過去最大の3,217円高という、今回よりはるかに大きな変動がありました。急落の翌日に急反発することもあれば、下落が続くこともあります。どちらになるかを事前に知る方法はありません。
下落と回復は対称ではない
もう一つ知っておきたいのが、下落率と、元の水準に戻るのに必要な上昇率の関係です。
| 下落率 | 元に戻るのに必要な上昇率 |
|---|---|
| −10% | +11.1% |
| −20% | +25.0% |
| −30% | +42.9% |
| −50% | +100.0% |
下落が深いほど、回復に必要な上昇率は大きくなります。これは計算上の事実です。投資には元本保証がなく、下落した資産が一定期間内に回復する保証もありません。だからこそ、後述する「使う時期」の確認が重要になります。
積立投資(ドル・コスト平均法)を仮の数字で確かめる
新NISAのつみたて投資枠では、毎月など定期的に一定額を買う方法が基本です。この「毎回同じ金額で買い続ける」方法はドル・コスト平均法と呼ばれます。価格が高いときは少なく、安いときは多く買うことになるのが特徴です。
ここからは、仕組みを理解するための完全に仮の数字で計算します。実在の商品や相場の動きを示すものではありません。
毎月3万円を6か月積み立て。基準価額(1口あたりの価格)が 10,000円 → 8,000円 → 6,000円 → 7,000円 → 9,000円 → 10,000円 と動いたとします。
■ 買えた口数:3.00口+3.75口+5.00口+約4.29口+約3.33口+3.00口 = 約22.37口
■ 平均取得単価:18万円 ÷ 22.37口 = 約8,047円
■ 6か月後の評価額:22.37口 × 10,000円 = 約22万3,690円(投資額18万円)
価格は最初と同じ10,000円に戻っただけですが、安いときに多く買えた分、評価額は投資額を上回っています。
同じく毎月3万円。基準価額が 10,000円 → 11,000円 → 12,000円 → 13,000円 → 14,000円 → 15,000円 と上がり続けたとします。
■ 買えた口数:約14.68口/平均取得単価:約12,263円
■ 6か月後の評価額:約22万167円(投資額18万円)
■ 比較:最初に18万円をまとめて買っていれば、18口 × 15,000円 = 27万円でした。
2つの例からわかるのは、ドル・コスト平均法は「必ず得をする方法」ではないということです。上がり続ける相場では、最初にまとめて買ったほうが結果は良くなります。一方、途中で下がる局面があると、平均取得単価を下げる効果が出ます。
- ✓得られるもの:買う時期を判断しなくて済むこと。高値でまとめて買ってしまうリスクを分散できること。
- ✓得られないもの:損失が出ないことの保証。最終的な評価額は、取り崩す時点の価格で決まります。
- ×誤解しやすい点:「下がっている間は損をしている」と考えがちですが、積み立てを続けている人にとっては、同じ金額でより多くの口数を買っている期間でもあります。
なお、数字は計算過程で四捨五入しています。実際の投資信託では信託報酬などのコストや、基準価額の日々の変動もかかわります。
積立額と期間から将来の資産額を確認
積立額・利回り・期間から資産の推移を試算し、目標の達成確率や取り崩しプランも確認できます。値動きの幅を織り込んだ結果を見られます。
値動きが大きい時期に起きやすい3つの落とし穴
相場が大きく動くとき、損失の原因になりやすいのは値動きそのものより、値動きに反応した自分の行動です。よくあるパターンを、先ほどの仮の例Aの数字で確かめます。
落とし穴①:狼狽売り(ろうばいうり)
急な値下がりに慌てて売ってしまうことを狼狽売りといいます。仮の例Aで、3か月目(基準価額6,000円)に不安になって全部売ったとします。
■ 3か月で買えた口数:3.00+3.75+5.00 = 11.75口(投資額9万円)
■ 売却額:11.75口 × 6,000円 = 7万500円
■ 結果:1万9,500円の損失が確定。その後の値上がりは受け取れません。
評価額が下がっているだけの状態は「含み損」で、売らなければ確定しません。もちろん、売らずに持ち続けても価格が戻る保証はありません。ただ、売る理由が「怖いから」だけなら、計画そのものを見直すほうが先です。
落とし穴②:下がったときの積立停止
「下がっているから一度止めて、落ち着いたら再開しよう」という判断もよく見られます。仮の例Aで、2〜4か月目の積み立てを止め、1・5・6か月目だけ買ったとします。
■ 続けた場合:投資額18万円 → 評価額 約22万3,690円(約+24.3%)
■ 止めた場合:投資額9万円 → 評価額 約9万3,333円(約+3.7%)
この仮の例では、安く買えたはずの3か月を逃したことで、結果に大きな差が出ています。ただし、これは「下がった後に戻った」という仮定のもとでの計算です。下落が長く続けば、続けた場合の評価額も下がり続けます。止めるか続けるかは、相場の予想ではなく、家計の事情で決めるのが基本です。
落とし穴③:毎日の評価額を見すぎる
アプリで毎日評価額を確認していると、日々の上下がそのまま気持ちの上下になります。長期の積立では、確認の頻度を決めておく(例:月1回、年1回の見直し日を決める)だけでも、衝動的な判断を減らせます。
自分の計画で確認しておきたいこと(チェックリスト)
相場が荒れているときこそ、見るべきは株価ではなく自分の計画です。次の項目を順に確認してください。
- 1生活防衛資金は別に確保できているか:病気や失業など急な出費に備えるお金は、値動きのある資産とは分けて預貯金で持つのが基本です。目安は生活費の数か月分から1年分程度と説明されることが多く、働き方や家族構成で変わります。ここが足りないと、下落時に売らざるを得なくなります。
- 2そのお金を使うのは何年後か:10年以上先に使うお金と、2〜3年後の住宅購入や教育費に使うお金では、値動きに耐えられる度合いが違います。使う時期が近いお金を値動きの大きい資産に置いていないかを確認します。
- 3取り崩しを始める時期を想定しているか:積立中の下落は「安く買える期間」でもありますが、取り崩しの直前や取り崩し中の下落は影響が大きくなります。取り崩しが近づいたら、一度にすべて現金化するのではなく、時期を分ける方法もあります。
- 4積立額は家計から無理なく出せる金額か:光熱費や物価の上昇で家計が苦しくなっているなら、相場とは関係なく積立額の見直しが必要なこともあります。積立額の減額は、狼狽売りとは別の、家計の判断です。
- 5資産全体のうち値動きのある資産は何割か:評価額が2〜3割下がった場合を想定して、その金額に気持ちと家計が耐えられるかを考えます。耐えられないと感じるなら、配分そのものを見直す材料になります。
- 6何に投資しているかを把握しているか:連動する指数、投資地域、コストを確認しておくと、ニュースの見出しと自分の資産の関係を落ち着いて判断できます。
NISA・iDeCoの非課税効果を試算
年収や積立額から、NISA・iDeCo・課税口座を使った場合の節税効果を比べられます。
よくある質問
Q. 株価が下がっているので、積み立てを止めたほうがよいですか?
A. 相場の予想を理由に止めるかどうかを判断することはおすすめできませんし、当サイトとして売買の判断を示すこともできません。確認したいのは、生活防衛資金が確保できているか、積立額が家計から無理なく出せているか、使う時期まで十分な期間があるかの3点です。家計の事情で減額や停止が必要なら、それは合理的な判断です。
Q. ドル・コスト平均法なら損をしないのですか?
A. 損をしない方法ではありません。本文の仮の例Bのように、上がり続ける相場ではまとめて買ったほうが結果は良くなりますし、取り崩す時点で価格が投資額を下回っていれば損失になります。メリットは、買う時期を判断せずに済み、高値でまとめて買うリスクを分散できる点です。
Q. 1日に1,000円も下がるのは異常なことですか?
A. 指数の水準が6万円台にあるため、1,000円は約1.6%の変動です。2024年8月5日には4,451円(約12.4%)の下落、翌日には3,217円の上昇がありました。「円」の大きさだけで判断せず、割合で見ると落ち着いて受け止めやすくなります。
Q. 下がったところで多めに買い増すのは有効ですか?
A. どこが底かは事後にしかわからないため、有効かどうかは結果次第です。買い増しを検討する場合も、生活防衛資金や近い将来に使うお金に手をつけないことが前提になります。年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)や生涯の非課税保有限度額(1,800万円)の範囲も確認が必要です。
Q. もうすぐ取り崩す予定です。何に気をつければよいですか?
A. 取り崩しが近い時期の下落は、回復を待つ時間が短いぶん影響が大きくなります。必要な時期と金額を整理し、近い時期に使う分は値動きの小さい資産に移しておく、取り崩しの時期を分けるなど、相場に左右されにくい形を早めに検討しておくことが一般的です。
Q. ニュースで話題のAI関連銘柄を買うべきですか?
A. 当サイトは個別の銘柄や商品の推奨は行っていません。10月下旬の値動きを見てもわかるとおり、同じテーマが数日で売り材料にも買い材料にもなります。話題性ではなく、自分の投資期間と許容できる値動きの範囲から考えることが基本です。
相場の大きな上下は、積立投資を続けていれば何度も経験することになります。そのたびに株価を見て判断するのではなく、生活防衛資金・投資期間・取り崩しの時期という自分の計画に立ち返ることが、長く続けるための土台になります。