さらに11月1日には送配電会社の託送料金の改定も予定されており、値上がり要因が重なります。暖房を使い始める時期と重なるため、「請求額が急に増えた」と感じる家庭が多くなりそうです。
この記事では、自分の家の増加額を検針票から計算する方法、各社が発表している標準モデルでの変化額、そして冬の支援がどうなりそうかを、公表情報をもとにFPが整理します。
何が終わったのか:支援の中身と期間
今回終了したのは、国が電力会社・ガス会社を通じて料金を値引きしていた電気・ガス料金負担軽減支援事業です。申請は不要で、検針票や請求書に値引き行として自動的に反映される仕組みでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 2026年7月使用分〜9月使用分の3か月間 |
| 電気の値引き単価 | 3.5円/kWh(低圧・家庭向け) |
| 都市ガスの値引き単価 | 14円/㎥ |
| 財源 | 令和8年度予備費を使った時限措置 |
| 手続き | 申請不要(料金から自動で差し引かれる) |
なお、プロパンガス(LPガス)は今回の支援の対象外です。対象は電気と都市ガスでした。
「9月使用分で終了」なのに値上がりが11月請求からの理由
ニュースでは「9月使用分で終了」「10月検針分で終了」など、表現が記事によって違います。混乱しやすいところなので、使用月・検針月・請求月の3つを分けて整理します。
| 使用した月 | 検針の時期 | 請求・支払いの時期 | 値引き |
|---|---|---|---|
| 2026年8月使用分 | 9月 | 9〜10月 | あり |
| 2026年9月使用分 | 10月 | 10〜11月 | あり(最後) |
| 2026年10月使用分 | 11月 | 11〜12月 | なし |
つまり「9月使用分で終了」と「10月検針分が最後」は同じことを別の言い方で表しているだけです。電気を使ってから請求が届くまでに1〜2か月のずれがあるため、支援の終了を家計で実感するのは11月以降になります。
自分の家はいくら増えるのか(計算方法)
世帯別の増加額を示した記事は多くありますが、電気やガスの使用量は家庭ごとに大きく違うため、平均値はあまり当てになりません。自分の検針票から計算するのが確実です。計算はとても簡単です。
電気:使用量(kWh)× 3.5円
都市ガス:使用量(㎥)× 14円
この2つを足したものが、値引きがなくなることによる1か月あたりの増加額です。
検針票の使用量を当てはめた目安が次の表です。
| 電気の使用量 | 増加額(月) | 都市ガスの使用量 | 増加額(月) |
|---|---|---|---|
| 200kWh | 700円 | 20㎥ | 280円 |
| 300kWh | 1,050円 | 30㎥ | 420円 |
| 400kWh | 1,400円 | 40㎥ | 560円 |
| 500kWh | 1,750円 | 50㎥ | 700円 |
| 600kWh | 2,100円 | 60㎥ | 840円 |
電気:400kWh × 3.5円 = 1,400円
都市ガス:30㎥ × 14円 = 420円
合計 = 月1,820円の増加
この水準が12か月続くと仮定すると、年間では 1,820円 × 12 = 21,840円 の負担増に相当します。ただし実際には暖房を使う冬は使用量が増え、春秋は減るため、月ごとの金額は上下します。
実際の請求額は、これより大きく動くことがある
上の計算は「値引きがなくなる分だけ」を取り出したものです。実際の請求額は、これに加えて燃料費調整額や後述の託送料金改定の影響も受けます。
各社が公表している標準的なモデルでの変化額は、たとえば次のように報じられています。いずれも補助終了以外の要因も含んだ金額である点に注意してください。
- 1東京電力の平均モデル:11月分は10月分より約1,032円高くなる見込み。11月1日の託送料金見直し後の単価で計算すると約1,286円高。
- 2東京ガスの標準家庭(月30㎥):前月より744円高い6,488円。
- 3大手電力10社:9月使用分の時点ですでに全社が値上がりしていました。
自分の家の正確な金額を知りたい場合は、11月の請求書が届いたら10月分と並べて見比べるのが一番確実です。その際、値引き行(「電気・ガス価格激変緩和対策事業」などの名称)が消えているかも確認できます。
光熱費の増加を家計全体で受け止められるか確認
固定費と変動費のバランスから、家計の余力を診断できます。
11月は託送料金の改定も重なる
2026年11月1日には、送配電8社の託送料金の改定が予定されています。託送料金とは、発電所から各家庭まで電気を届ける送電網の利用料にあたるもので、電気料金の中に含まれています。
この改定分は電気料金に転嫁される見込みで、補助終了と同じ11月に重なります。つまり11月の請求では、値上がり要因が2つ同時に効くことになります。前述の東京電力の例で「1,032円高」と「託送料金見直し後の単価では1,286円高」という2つの数字が出てくるのは、この違いによるものです。
冬の支援はあるのか
本記事の執筆時点(2026年10月11日)で、10月使用分以降の電気・ガス料金支援について政府の正式な発表はありません。経済産業大臣は9月の時点で、10月以降も支援が必要であるとは考えていないとの認識を示したと報じられています。
ただし、冬に支援が実施される可能性がなくなったわけではありません。過去には秋から冬にまとめられる経済対策の中で追加決定された例があります。2025年冬の支援も、11月下旬に閣議決定された経済対策の施策のひとつとして実施されました。
民間のシンクタンクからは、資源価格の上昇の影響が秋から冬に本格化するため、支援が3か月で終わらない可能性があるとの分析も示されています。実施されるかどうかは今後の経済対策の内容次第であり、現時点で断定はできません。
今からできる備え
光熱費は、使い方を変えるだけで下がる部分と、契約を見直さないと下がらない部分があります。効果が大きい順に整理します。
- 1検針票で使用量(kWh・㎥)を把握する:金額ではなく使用量を見る習慣をつけると、単価の変動と使いすぎを切り分けて判断できます。まずここが出発点です。
- 2料金プランが生活に合っているか確認する:在宅時間や使う時間帯が変わっているのに、契約時のままになっていないかを見直します。夜間が安いプラン、使用量が多いほど有利なプランなど、設計はさまざまです。
- 3契約アンペアを見直す:電気の基本料金はアンペア数で決まります(地域により異なります)。同時に使う家電が減っているなら、下げられる余地があるかもしれません。ただし頻繁にブレーカーが落ちるようでは本末転倒なので慎重に。
- 4暖房の設定を見直す:冬の電気使用量は暖房が大きな割合を占めます。設定温度を下げる、サーキュレーターで空気を回す、窓際の断熱を補うといった工夫は、使用量そのものを減らします。
- 5年間の光熱費を家計に織り込む:冬だけ赤字になる家計は、年間で均した予算を立てると管理しやすくなります。月ごとの増減に一喜一憂しなくて済みます。
なお、電力会社やプランの乗り換えは、違約金や解約金の有無、燃料費調整額の上限設定の有無によって損得が変わります。単価の安さだけで判断せず、契約条件まで確認することが大切です。
よくある質問
Q. 補助金の終了に、何か手続きは必要ですか?
A. 必要ありません。この支援はもともと申請不要で、電力会社・ガス会社が料金から自動的に差し引く仕組みでした。終了も自動的に反映されるため、利用者側で行う手続きはありません。
Q. 10月の請求はまだ安かったのですが、終わっていないのでは?
A. 終わっています。10月に請求されているのは多くの場合9月使用分で、これが値引きの最終月にあたります。値引きがなくなるのは10月使用分からで、その請求が届くのは11月以降です。
Q. プロパンガス(LPガス)も対象でしたか?
A. 対象外です。今回の支援は電気と都市ガスが対象でした。プロパンガスは料金体系が事業者ごとに異なり、この事業の枠組みには含まれていません。
Q. 「補助終了で月2,000円以上上がる」という記事を見ましたが本当ですか?
A. 使用量によります。補助終了だけで月2,000円増えるのは、電気を月570kWh以上使う世帯の水準です(570kWh × 3.5円 ≒ 2,000円)。ただし実際の請求額は燃料費調整額や託送料金改定の影響も受けるため、補助終了分だけを取り出した金額とは一致しません。ご自身の検針票の使用量で計算するのが確実です。
Q. 冬に支援が再開されたら、さかのぼって適用されますか?
A. 現時点では冬の支援自体が発表されていないため、適用方法も分かりません。過去の支援では、対象となる使用月をあらかじめ定めて実施されてきました。発表があった場合は、対象期間がいつの使用分なのかを確認してください。
Q. 電力会社を乗り換えれば安くなりますか?
A. 一概には言えません。基本料金・従量単価・燃料費調整額の扱い・解約条件が会社ごとに異なり、使用量やライフスタイルによって有利なプランは変わります。現在の使用量(kWh)を把握したうえで、同じ使用量で複数社を比較するのが確実です。
補助の終了は止められませんが、自分の家がいくら増えるのかを数字で把握できていれば、慌てずに備えられます。まずは検針票を開いて、使用量に3.5円(都市ガスは14円)を掛けてみてください。そこが対策の出発点になります。