保険の営業でよく使われるこれらの数字は、嘘ではありません。
しかし、高額療養費制度・傷病手当金・遺族年金を知らずに語られる数字は、不完全です。
日本の公的保険は世界有数の水準です。その内容を把握した上で民間保険と比較することが、保障選びの正しい順序です。この記事では、FPの視点から「公的保障の実額」「民間保険の正直な評価」「見直しの4ステップ」を解説します。
保険会社が知られたくない「本当のこと」
後田亨氏(元日本生命営業職・保険相談室代表)は著書『いらない保険』でこう述べています。「プロほど保険に入らない」——保険業界の内側を知る人間ほど、民間保険を最小限にとどめる理由があります。
その理由を知ることが、保障選びの出発点です。
① 保険料の約30%は「手数料」として消える
生命保険料のうち、実際に保険金支払いに使われるのは約70%程度とされています。残りの約30%は保険会社の事業費に消えます。つまり保険とは「1,000円払って700円の保障を買う」商品とも言えます。
これに対して自分で積み立てて運用すれば、払った分がそのまま(あるいはそれ以上に)資産になります。「貯蓄性保険」「終身保険」を資産形成目的で契約するより、NISAで積み立てたほうが合理的なのはこのためです。
② 終身保険の「保障内容」は必ず陳腐化する
30〜40歳で契約した終身保険の入院日額・給付対象疾患・支払い条件は、20〜30年後には医療の進歩に合わなくなります。「日帰り手術が増えた」「がんの通院治療が主流になった」など、医療は変わるのに保険の約款は変わりません。
③「安く・短く・少なく」が保険の正解
後田氏の結論は明快です。保険は「自分で積み立てられない大きなリスク」にだけ使うべきもの。それ以外のリスクは、公的保障と自己の貯蓄で対応するのが合理的です。
日本の公的保障は「最強」——その中身を知る
民間保険を考える前に、まず公的保障の内容を把握することが必須です。ほとんどの人が「こんなに手厚いとは知らなかった」と感じます。
🏥 高額療養費制度
どれだけ高額な治療を受けても、1ヶ月の自己負担が所得に応じた上限額に抑えられます。100万円の医療費でも自己負担は約8.7万円。入院費が青天井になる心配はほぼありません。
💼 傷病手当金
病気・ケガで働けなくなった場合、最長18ヶ月間、給与の約2/3が支給されます。月収30万円なら月20万円が18ヶ月=最大360万円。多くの就業不能保険が不要になります。
👨👩👧 遺族年金
会社員が死亡した場合、配偶者と子どもに遺族基礎年金+遺族厚生年金が支給されます。子ども1人の場合、年間約150〜250万円が継続的に支給されるケースが多数。
🦽 障害年金
重度の障害状態になった場合に支給されます。障害厚生年金(2級)は報酬比例部分も含まれるため、加入期間・給与水準によっては年100〜200万円程度の受給も可能です。
公的保障でカバーできないもの(民間保険が有効な場面)
高額療養費制度は「保険診療」が対象です。先進医療・差額ベッド代・食事代などの「保険外費用」はカバーされません。また、フリーランス・自営業者は傷病手当金がないため、就業不能リスクへの備えが別途必要です。
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保険種類別 一般的な優先度の目安
後田亨氏の著書と公的保障の内容を踏まえた、一般的な傾向の参考情報です。個人の状況によって最適解は異なります。
| 保険種類 | 一般的な傾向 | 解説(参考) |
|---|---|---|
| 掛け捨て死亡保険 (定期・収入保障) |
状況次第 | 子どもが独立するまでの期間、遺族年金で不足する分を補う形で活用されるケースが多いです。子ども独立後は優先度が下がる傾向があります。 |
| 終身保険・養老保険 | 優先度低め | 保険料の約30%が事業費コスト。資産形成を目的とする場合は積立投資との比較を検討される方が多いです。保障内容の「陳腐化」リスクも考慮を。 |
| 医療保険 | 優先度低め(※) | 高額療養費制度で月の自己負担に上限があります。6ヶ月以上の生活防衛資金がある場合、優先度が下がるケースが多いとされます(個人差あり)。 |
| がん保険 | 状況次第 | 治療の長期化・通院治療への移行で支払条件が合わないケースが増えています。リスク意識や家族歴に応じて通院型・実費補償型を比較検討されることをおすすめします。 |
| 就業不能保険 | 雇用形態次第 | 会社員は傷病手当金(最長18ヶ月・給与2/3)があります。フリーランス・自営業者は公的保障が手薄な場合があり、検討される方が多いです。 |
| 介護保険(民間) | 優先度低め | 公的介護保険制度で現物給付(介護サービス)が受けられます。民間の介護保険は支払条件を必ず確認することをおすすめします。 |
| 学資保険 | 優先度低め | 返戻率が低く流動性もない点が特徴です。教育費の積立方法として、他の手段との比較検討をおすすめします。 |
| 火災保険・地震保険 | 必要 | 公的保障がなく、損失が個人で対処できないレベルに達しうる。掛け捨てで必要最小限を継続することが合理的。 |
| 自動車保険(対人・対物) | 必要 | 対人賠償は億単位になりうるリスク。自賠責だけでは到底カバーできない。任意保険は生命保険より優先度が高い。 |
保険を見直すための4ステップ
保険を考える正しい順序は「公的保障の把握 → 自己資産の確認 → 不足分だけ民間保険で補う」です。この順序を逆にすると、不要な保険に何十年も払い続けることになります。
ステップ1:公的保障を「自分の数字」で把握する
高額療養費の自己負担上限は年収によって異なります。傷病手当金は自分の給与の2/3です。遺族年金は加入期間と報酬によって変わります。「制度があることを知っている」ではなく、「自分はいくら受け取れるか」を把握することが出発点です。
ステップ2:生活防衛資金を先に作る
月収の6ヶ月分の現金を手元に置くことが、多くの医療保険・就業不能保険を不要にします。月30万円の収入なら180万円の現金。これがあれば、高額療養費制度と合わせて、ほとんどの入院・手術リスクに対処できます。
ステップ3:「掛け捨て・短期・最小額」を原則にする
どうしても保険が必要な場合(子どもが小さい時期の死亡リスクなど)は、定期保険か収入保障保険で最小額・最短期間に絞ります。終身・養老・学資など「貯蓄型」の保険は、コスト面でNISAに絶対に勝てません。
ステップ4:年1回見直す
ライフステージが変わると必要な保障も変わります。子どもが独立すれば死亡保障は大幅に減らせます。住宅ローンを組めば団信が生命保険の代わりになります。「入ったまま放置」が保険の最大の無駄です。
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